
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」があるミラノの小さな教会
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。この絵がどこに飾られているかご存知でしょうか?
それはイタリアのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。世界遺産でもあるミラノの小さな教会の壁画です。
私たち旅行者も見学出来るんですよ。
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を見ました
ミラノの世界遺産、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。
この教会は、八角形のドームや中庭の回廊などの見どころがあります。とても美しい教会です。
でも、やはりマストはレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。美術史上に燦然と輝く傑作には敵いません。

数年前、私もこの教会の外観や内部を見たはずですが、正直「最後の晩餐」以外の記憶は残っていなかったりします。
ちなみに壁画ですので、展覧会などで持ち出されたことが一度もありません。門外不出の名画なのです。
この教会の修道院のかつての食堂の壁に描かれたものです。
なぜ、高名な芸術家・思想家、天才レオナルド・ダ・ヴィンチが、小さな教会の食堂の壁に大きな壁画を描いたのか不思議に思うかもしれませんが、彼の支援者(パトロン)だったミラノ公国の君主に依頼されてのことだったようです。
「最後の晩餐」との対面
さて私、薄暗い今は何も置かれていないかつての食堂に足を踏み入れると、見てみたくてたまらなかった「最後の晩餐」との対面がついに叶いました。

(教会の事務所です)

(これはポスターです)
その場の空気からも感じる傑作感
私はこの絵見たさにミラノに旅行した、と言っても過言ではなかったのですが、どこか神聖な佇まいがするこの絵に対面して、本当にはるばるここまで来て良かったと思いました。
本当に凄い絵画は私のように絵のことをよく知らない人にも、空気でそれが傑作だとわかるものですが、「最後の晩餐」もその一つでした。
見学のルールで少しの間しかその部屋にいることはできなかったのですが、その間ずっとこの絵に釘づけでした。
この絵の反対側にもう一つ誰かの描いた大きな壁画があるのですが、それに気づいたのは最後に部屋から出ようと振り向いた時だったというくらい周りが見えていませんでした。
ひとりひとりの顔に見入りました
この絵の優れているところとしてよく挙げられるのが、人物の心理描写の的確さです。
「最後の晩餐」はキリストが十二人の使途と一緒に夕食をとっている時に、『この中の一人がわたしを裏切る』と宣言した場面ですが、この絵の中で使徒たちが浮かべる表情は一人一人のその時の心情をとても巧みに表していると評されています。
私も、一人ひとりの顔の表情に、じっと見入ってしまいました。
ダ・ヴィンチがこの絵を描いている時に最後まで悩んだのが、キリストとユダの顔だったと言われています。
この両者の関係性は、その後の教団の方向性や信者の意識に多大な影響を与えたと思います。誰しも気になるポイントですよね。極めてデリケートになるの当然でしょう。納得です。
技巧と修復について
絵画の様々な描写技術について、深く語れるほど私は絵には明るくはありませんが、レオナルド・ダ・ヴィンチが「最後の晩餐」で用いた技巧について少々ご紹介しましょう。
テンペラ画なんです
横長サイズ(横420cm、縦910cm)のこの巨大な壁画は、一点透視法という遠近法で立体的に描かれており、絵の中にも本物の食堂が続いて行っているように感じることが出来ます。
またこの絵画が書かれたのはルネッサンス期(15世紀末期)ですが、ダ・ヴィンチはこの時代の壁画の代表的な書き方フレスコ画ではなく、テンペラ画の技法でこの絵を描きました。
フレスコ画は壁にぬった漆喰に絵の具の色をしみこませるように描いていくためダメージを受けにくいのですが、漆喰をぬってから短時間で絵を仕上げる必要がありました。 そのため、平素よりじっくり絵を描き込む制作スタイルだったダ・ヴィンチは、塗り直しや書き直しが比較的容易に行えるテンペラ画を選んだようです。
ただこの技法は諸刃の刃でした。
湿気に弱くダメージを受けやすいという、きわめて大きな欠点があったのです。
20世紀に大掛かりな修復が行われました
絵の完成当時から食堂の湯気や熱気にさらされて来た「最後の晩餐」のダメージは相当なもので、何度も大掛かりな修復が必要とされたようです。
中にはあまり良くない修復のされ方をしたこともあったようで、本来の姿からほど遠い時期もあったかもしれません。 それでも、500年以上の期間に渡り、ナポレオンの侵攻、内乱、世界大戦など幾多の苦難を無事乗り切ってきたこの絵は、「強運の持ち主」と言えるのかもしれませんね。
なお、20世紀の終盤に入ってからピニン・ブランビッラという女性の画家が20年以上かけて修復し直すまで、実は、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」の本当の全貌は明らかになっていなかったんだそうです。

元来、キリストの「口が開いていた、足が描かれていた」と言った事柄は、この大修復によって判明したそうです。
見学方法と行き方
観光や見学をするにあたり気を付けないといけない点があります。
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院に入場して「最後の晩餐」を見るためには、事前に電話やインターネットで予約しないといけません。完全予約制なんです。
夏などの観光シーズンはかなり混みあって予約が取りにくいので、旅行の日程が決まったら早めに予約する方がいいでしょう。

項目名 | 概要 |
---|---|
開館/休館日 |
日・祝祭:8:00~19:00 |
入場料金 | 12ユーロ(公式サイト価格)。定期的に改訂されています。 |
入場制限 | 30名程度の小さなグループ単位で入場見学します。 |
見学時間 | 15分間という時間制限があります。 |
行き方 | ミラノの地下鉄カドルナ駅を降りて徒歩で15分ほどです。 |

当初、何でこんなに入場が厳しく規制がされているんだろうと不思議でした。

そもそも美術館ではありませんし、ダメージを受けやすい「最後の晩餐」を守るためには仕方がないことなのでしょう。
地下鉄の改札を出たら、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院まで、ゆっくり散策気分で歩きましょう。
教会までの道すがら、「これから傑作絵画と対面するんだ」と、徐々に気分を高めていきましょう。
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By Ansun (Updated by Asatsuki)